学長なんでもノート

自分の感受性くらい

もう11月ですね。早いものだ。

2年生のみなさんは大学生活の仕上げまで、あともう少しになりましたね。就職や進路が決まっている人、まだ決まっていない人、さまざまな気持ちでいるんだろうな〜。

先週の月曜日、10月24日、ある高校の全校生徒にお話をしました。高校の先生にお願いをして、事前のアンケートをお願いしました。前回のノートに登場した「D J真由美」こと、本学客員教授谷口真由美さんのパクリです。講演は、3年生120人から寄せられた進路や人生などについての考えや質問についての僕の返事のようなものでした。進路も定まり、将来への抱負を持った生徒もたくさんいました。でも印象に強く残った言葉は、「不安、自信ない、怖い、逃げ出したい」でした。受験に合格できるのか、社会人になれるのか、自分なりの人生を生きていけるのかという苦悶の問いかけでした。「夢、目標、計画が持てない」という悩みもありました。

僕は、もう正解探しはやめにしようといったのです。きっとどこかに正解があるはずで、自分だけがたどり着いていないと思うから、悩む。はっきりいって生き方の選択に正解なんかありません。問い続けることで人生は続いていくのだと。

夢も計画も目標も、「するべき」から始まっていませんか?僕は夢にはこだわりがありません。計画や目標もごくごく近い先のことしか考えません。大切なのは「今」だと思っているし、「現実」です。目標や計画に縛られていては、予想外の素敵な可能性を否定することになるかもしれない。高校生のみなさんがしようとしている進路選択は、人生100年の入り口にしかすぎない。人生を決定づけるものではない。これから数多の選択をすることになります、と。

また、これから若いうちに、なにをやっておくことが必要かという質問も多かったです。

D J真由美さんは“たくさん失敗すること”だといいましたね。『他人や過去は変えられないけど、自分が変われば未来は変えられる。だから自分のトリセツを持つように自分に詳しくなること』と。

僕も同じことを言ったのです。

とことん自分軸でものを考えるということ。エコも大事だけど、エゴも大事。話が、先生が、親が、友達が、から始まるのではなく、「わたしは」から、言葉を紡いでいくのです。しっかり自分の両足で立ってね。

では、失敗するといってもどうすればいいのか。それは、たとえれば、たくさん打席に立つこと、どんどんバットを振ることです。野球選手は10回のうち3本ヒットを打てば、7回失敗しても、強打者と認められる。スタンドで、選手を見ているだけではなにも始まらない。あいつ打てないね〜などとひとの失敗を笑うひとは、やがて自分の失敗を恐れるようになるのですよ。

今年一番、準備して緊張した講演… 高校生のみなさんは、どう聞いてくれたでしょうね。

最後に、大学生のみなさん(特に2年生に)高校生のみなさん(特に3年生に)

僕の大好きな詩を贈ります。できれば、声を出して読んでみてください。

自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いていく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを

友人のせいにはするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを

近親のせいにするな

なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを

暮らしのせいにはするな

そもそもが ひよわな志にしか過ぎなかった

駄目なことの一切を

時代のせいにするな

わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ

茨木のり子 『詩集 自分の感受性くらい』(筑摩書房) より

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