この春に、NHKで放映されていたドラマ「舟を編む〜私、辞書をつくります」はとっても面白かった。もともとは、三浦しおんの傑作小説が原作で、映画化もされています。 宮崎あおい(ボク、大ファンです)主演の素晴らしい作品でした。
辞書【舟】を編集する【編む】出版社の人たちの物語です。ドラマも、映画も、さまざまな方法で観ることができるので、関心を持った人には見て欲しいです。船で大海に漕ぎ出して、無数無限の言葉を網ですくいながら、今に生命を与えるように、一つひとつ辞書に収めていく、辞書をつくるということは、気の遠くなるような膨大な営みであることがわかります。
今、私たちが生きている世界や社会を理解し、また人々とつながり合うためには、言葉、文字が不可欠です。それは長い歴史の中で継承され、また新しく生まれ、変化を繰り返しています。まさに時代の生き物のようです。
このドラマを観てから辞典が欲しくなり、ゆめタウン佐賀の紀伊國屋書店に行き「新明解国語辞典」を買いました。試しに「やばい」を引いてみると「違法なことをするなどして、警察の手が及ぶ恐れのある状態」、「自分の身に好ましくない結果を招く様子」とあります。そしてこの後に、近年追加されたであろうと思われる記述がありました。「最近の若者の間では『こんなうまいものは初めて食った。やばい』などと一種の感動詞のように使われる傾向がある」と。でも、僕も「やばい!うまい!」と言いますよ。「やばい」は今やもう、若者だけでない多くの世代の言葉になっていますね。言葉は生きている、変化しています。
ドラマでは愛と恋と恋愛という言葉が、登場人物それぞれのストーリーが絡み、こんな表現で辞書に収められます。
あい【愛】相手をいつくしむ心。相手のために良かれと思う心
こい【恋】人を好きになって会いたい。いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち
れんあい【恋愛】特定の二人の互いの思いが、恋になったり、愛になったり、時に入り交じったり、非常に不安定な状態
どうですか?しっくりきますか?
大学の本棚の隅っこに「角川国語辞典」を見つけて、取り出してみました。1969年、55年前のものですね。引いてみました。
あい【愛】かわいがりいつくしむこと、男女が思い合うこと
こい【恋】異性を愛ししたうこと
れんあい【恋愛】男女がたがいに愛し合うこと、恋
半世紀の間に、何が変わったか、わかりますよね。
愛や恋や、恋愛は、男女、異性だけのものではないということになって、現在の辞書にはしっかりと新しい時代の息吹が刻まれています。
ちなみに、最近買った「新明解国語辞典」の「愛、恋、恋愛」にも、男女、異性という表現はありません。
れんあい【恋愛】特定の相手に対して他の全てを犠牲にしても悔いないと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと
なんだか、このドキドキするような恋愛観を書いた人に会ってみたいな〜。
そうだ!大学生活では、これも大切ですね。
ともだち【友達】一緒に何かをしたり遊んだりして、気持ちの通いあっている人
ゆうじょう【友情】友人として、相手を思い、また裏切らぬ真心
恋も、愛も、友情も、出会いがあってこそ。大学は最高の出会いの場です。