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学長なんでもノート

「トロッコ問題」とCINEMA IMAMURA『福田村事件』

開講式(9月20日)から1週間が経ちました。学長の挨拶の中で、「トロッコ」問題についてお話ししましたね。当日、なんだかうまく説明できなかったなという感じがしましたので、ここでプレイバック。まずは、AIのお話から。

開講式で話したかったこと

「人工知能(AI)の登場と進化により、無くなる仕事もあるけれど、サジョタンで学んでいる経験やスキルは、AIにとって代わられるものでないことが多い。自信を持って学んでいこう。それに第一、AIは人間の能力を追い越すような存在ではない。だいたい、AIというのは、意見をとりまとめるのはうまいけど、知ったかぶりする奴。自分で焼きそばを食べたこともないのに美味しさを説明し、恋の悩みを経験してもいないのに胸キュンを解説したりする奴。自分から考える力はない。でも人間である私たちは自分で考える力を持たないとね」とお話ししました。

そこで「トロッコ問題」を考えてみよう。暴走したトロッコをそのままにしておくと、多くの人がひかれてしまう、トラックを切り替えると一人だけがひかれてしまう。「一人の犠牲により、多くの人を助けるべきか、否か、あなたならどうする?という問題です。どうする?GOする?AIに相談してみる?」

これについて、ドイツの哲学者のコメントにふれて、こういう問題提起自体が人間の価値を認めないもので、そもそも問題として正しくないし、ましてや倫理に関わる問題をAIに聞いても仕方ないから、「答える必要な〜し!」と僕は思う、とお話ししたのでした。

やっぱりわかりにくいか。

でもやはり、どっちを取る?という流れに乗ってしまうと、どっちの悲劇がよりマシかという物語(今流行りの言葉で言えば、ナラティブ)にしかならないですね。いやですね。

本当にあった話、映画『福田村事件』を観てきました。

しかしそういう過酷な選択が、現実の場面、極限状態の中で、突きつけられたらどうなるか。

ものすごく考えさせられる映画を観てきました。

福田村事件』です。今から100年前、1923年9月1日関東大震災が発生、その5日後の9月6日千葉県の福田村の100人以上の村人たちに、香川から村に訪れた行商人一行15人の内、幼児や妊婦を含む9人が殺害されるという実際の事件をテーマにした映画です。当時、東京を中心に「混乱に乗じて、朝鮮人、中国人、社会主義者が、井戸に毒を投げた」等…デマが広がり、何千人ともいわれる人々が殺害されました。福田村の事件は、行商人たちの四国の讃岐訛りから、村人が「朝鮮人訛り」と勘違いしたことから起こった悲劇です。のどかな村の普通の人々が、どうして集団で殺戮行為にまで及んだのか。不確かな情報で、不安や恐怖に陥った村人の暴走。

昔はそんな酷いことがあったのか…では片付けられないのです。情報が少なすぎるから、でも多すぎるから、でもなく、今でも命にかかわる情報被害、情報加害は、日本でも世界でも起こり続けているのです。情報に踊らされ、煽られ、拡散し続けているうちに、信じられないような悲劇が生まれている。人間は怖いね〜、じゃなくて、どうすれば情報で命までも奪われる世の中を変えられるのか、考えるべき大切なテーマです。

確かに救いのない映画ではあるけれど、これを読んで「よし!観てみよう!」という人がいればうれしいです。僕も勇気を出して観に行きました。佐賀では、シアター・シエマで10月26日まで上映しています。全国でも佐賀でも、異例の大入りロングランだそうです。僕も一度、満席で入場を諦めたことがあります。

映画を観終わった後、佐嘉神社の大楠の木陰で、しばらくぼんやりと風に当たっていたことを思い出します。

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